04 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 06

惚れて通えば千里も一里

瑞山いつきの公式ブログです。

 

エージェント・コード 恋の陰謀は執筆の後で(ややネタバレ) 

エージェント・コード~恋の陰謀は執筆のあとで~ (一迅社文庫アイリス)エージェント・コード~恋の陰謀は執筆のあとで~ (一迅社文庫アイリス)
(2011/04/20)
瑞山 いつき

商品詳細を見る


◆シルサス帝国正式名称について
世界観のモデルに関してはあとがきで語っているとおり、20世紀初頭の英国です。実はシルサス帝国は正式名でなく略称で、設定はしてあっても作中にはでてきていません。でも人物紹介のところには載っていたりします(笑)正式名称のほうがモデルがわかりやすいですね。



◆コルセットはお好きですか?
シルサス帝国だけでなく、実際の英国もコルセットの流行り廃りは本当に流動的で、年単位で入れ替わっておりました。

英国でコルセットが本格的に廃れるのは第一次世界大戦がはじまってからです。戦争のせいで男手がなくなり、男の仕事を女性がやるようになると、コルセットはひたすら窮屈だったのでしょう。特に当時流行だったS字カーブのコルセットは、美しいけれど拷問器具に近いというか、あれじゃ走れないよなぁという代物だったので、廃れるのも早かったのではないかと思います。戦後、男手が戻ってくると、またちょっとだけコルセットが復活するんですけどね。

作中参考にした時代もコルセットの是非は問われていて、女性の健康についてお医者さんが警鐘を鳴らしています。ファッションの最先端である仏国では、コルセットのないドレスも世にでていました。英国のファッションは仏国の後追いだったりするので、威厳と節度を何よりも大切にした前女王の反動で、開放的な風潮にあった英国にも流れ込んだんじゃないかなと思っております。王様が王様だったし(笑)



◆エドワード朝って面白いんだぜ!
世界史的に19世紀末から現代だそうで、エドワード朝もがっつり現代です。ヴィクトリア朝は長いので、近代と現代が混ざっている感じですね。そしてヴィクトリア朝が好きな方は多いようですが、エドワード朝が好きだと言う人はあまり見かけません。見かけないのですけれど、楽しいのですよエドワード朝!

何が楽しいって、国王が楽しい!母子の確執とか、嫁との確執とか、放蕩王子っぷりとか、あの時代、あの場所に生まれて仏国大好き宣言したりとか、まごう事なき女好きの鑑で、愛人を城に連れこんで王妃から見える場所で散歩したりとか、ものっそい自由人だったけれど、たぶんそれだけじゃないんじゃないかなと思わせる外交手腕とか、市井の好感度とか、愛人に対する愛情深さとかね!

現代ともヴィクトリア朝とも異なるファッションも、目に楽しいです。作中でませんでしたが、わたしはあの時代の装飾品がすごく好きで、白金と真珠を使った上品で華やかなアクセサリーは、今の時代でもとても魅力的だと思っています。

世相も注目ポイントですかね。10年もない短い時代だけれど、窮屈だった前時代から解放された富裕層のはしゃぎっぷりは、楽しくてなりません。不況だったのに、そんなの知らんよと残金無視して金を使いまくる貴族たちの(自主規制)っぷりは変な笑いがでてきますが(苦笑)ちょっと前に三度目の正直とばかりに共和制となった仏国の影響か、政治も主義主張飛び交って、女性の力も増しました(前時代に比べればですが)。作中参考にしたように、婦人警官もでてきているのですよ。

資本主義が力をつけて、身分もちょっぴり曖昧になります。それでもごろごろいる放蕩息子が、あちらこちらで武勇伝を落としていたり(笑)興味のある方はぜひとも調べてみてくださいませ。



◆愛しのライフルSMLE No.1MkⅡ(9/1ちょっとだけ追加)
あとがきにもあるとおり、作中はただの軍用ライフル表記ですが、モデルはSMLE No.1MkⅡです。ええ、モデルがあるんです。

色々と画期的な銃で、はじめてこの銃を知った時、衝撃と感動を受けました。以下、今までの平均的なライフルの不備とSMLEシリーズへの変換。

「実はライフルって、もっと短くていいんじゃね?」→短くしました。軽くなっていいです。

「装填できる銃弾が5発って少ないよね?」→倍の10発!まだまだ撃てるぜ!

「撃った後って、銃身熱いよね」→木で覆いました。安全!そしてこれによって外見がとても特徴的になります。

「銃って暴発恐いよね」→マガジンカットオフ機構で暴発防止!安全装置より安心だぜ!


ここまで使用者のことを考えて開発して、目標に当たらないというオチが可愛かったのですよ(笑)

もちろん当時の銃は今ほど性能がよくないし、命中率だって高くないのですが、その中でも撃てば撃つほどガタが出ると評判だったので、本当に当たらなかったんだと思います(大笑)

もちろん新品は当たるようですけどね。

ちなみに特徴的なマガジンカットオフ機構も、戦時中は大して重要視されなかったらしいです。銃の総評としては痛し痒しな感じ。そんなところを全部含めて英国っぽくて可愛いなこのライフル!と大興奮したのはわたしです。

『エージェント・コード』を書き始めた時、「架空国だから銃の名前をだしちゃまずいよね。でも、この銃をモデルにしたとわかる人にはわかるように書こう」と、書いていたら、うっかり筆が滑りすぎました。担当さんに「説明が、ね……」と、言われてはじめて物語には必要のない説明だったと気づいて、泣く泣くガリゴリ削った思い出がありますよ。

同じように、作中だと説明を削ってしまったのですが、射撃は停止した状態で動かない的に当てるのも難しいものです。あの銃で車上からピンポイントでねらい打ちしたカルの腕は天才的だったりします。ライザもかなりいいほうなのですよ。

長銃ではありませんが、室内での銃撃戦シーンで、担当様が「ライザが人を殺していないのか心配です」とおっしゃったので、「22口径なら大丈夫ですよ。ドレスの下に隠し持っていた護身用なら、薄型で22口径のはずだし」と、解説しようとしたら、途中で「そこまで生々しい話はいいです」と言われて、まだ全部説明していないのにと内心で呟いた思い出。

銃の威力は口径の大きさではなく、火薬の量だったりするので、22口径だからって安心はできないんですけどね。銃の大きさ的に標準的な威力なはずですから、問題ないですよ。相手大きくてごつい成人男子だし。(言いたかった説明の続き)



◆クラッシックカーっていいよね
カルの愛車モデルは英国の誇るロールス・ロイス社のシルバーゴーストです。

米国が労働者用に工場での大量生産で安価な自動車を売り出そうとしているご時世に、時代を真逆に疾走した走る芸術品(笑)部品の一点一点を優秀な職人が手作りして、機動性、静音性、乗車性と三拍子揃ったハンパない高性能車を作りだし、誰が買うんだこんな値段という値で売り出したらば──

世界中のマニアが買いました。

本当にいいものってのは売れるんですね。

実はロールス・ロイス社の創業者二人も面白いです。片方は上流階級のイケメン放蕩息子(ロールス)。片方は労働者階級で、苦労して苦労して成り上がったオッサン技術者兼経営者(ロイス)。

仏車を見たフレデリック・ヘンリー・ロイスが、「わたしならもっといいものが造れる!」と、宣言し、本当にいい車を造ったら、その車を見て惚れこんだチャールズ・スチュアート・ロールズが、「もう彼の車以外売らないぞ」と決意したのが二人のなれそめらしいです。

車好きという以外共通点のない二人ですが、だからこそ妥協はしなかった模様。

作中で、カルが車を回してくれるように頼んだ伝言先は、チャールズ・スチュアート・ロールズを思い浮かべて「スチュ」と呼ばせました。ちなみに本物のスチュは冒険家でもあって、飛行機事故で短い人生を終わらせてしまいました。けれど、二人の車と名は今も現代に残っております。



◆登場人物についてもなんか言っとく?
ライザの赤毛は、当時アイリスさんで赤毛のヒロインが少ないという話を聞いたからです。作中のとおり、赤毛にコンプレックスを抱いている女性は多いので、色々とコンプレックスのある元軽業師で淑女未満な少女にしました。

淑女としての呼びかけを『レディ』じゃなくて、『レディー』にしたのは、なんとなくレトロっぽい雰囲気にしたかったからです。同じように冒頭の物語は、ちょっと古めの翻訳物の物語を意識して書きました。

カルは……まあ、色々と思うところがあって、あんな設定にしたんですが、ぶっちゃけ本が売れなかったので、続編で説明されることはないかなー?担当さん曰く、「手に取ってくれた人の評判はいい」らしいので、口コミで売れないものかとちょっぴり思ったのですが……続編を期待してくださった方には、力及ばず申し訳ないです。第一次世界大戦直前の時代がモデルというのもあるようなんですが、まあ、ぐだぐだいっても事実は変わらんので(苦笑)

しかし本当に『エージェント・コード』を気に入ってくださったようで、担当さんがまだ希望を捨ててないようなことをおっしゃっているのですよ。今後売れゆきが伸びればどうなるかわからないとのことなのですが…………うーん。希望を持つなら、まだ言わないほうがいいんですかね?

とりあえず、誤解されている方が多いようなので一言だけ。

カルの祖父は国王ではございません。

わりとわかりやすい伏線だったと思うのですが、なぜだか誤解されてしまった模様(苦笑)ミスリードと取るか、筆者の実力不足と取るかは人それぞれですが、ひっそりと訂正させていただきます。


アイリスさんの次回作は別の世界の物語になる予定です。それ以降も『エージェント・コード』の続きがでなかったら、「ああ、売れなかったんだな……」と思って、そっとしておいてくださいまし。

続き読みたいなぁと思ってくださった方は、応援よろしくお願いします。

Category: 一迅社文庫アイリス裏話

Tag: エージェント・コード裏話 
tb -- : cm --